なぜそのAPIは使われないのか? クラウドサービスのAPIエコシステムを可視化する API Eco MAP プロジェクト
今年のはじめに公開し、思った以上に反響を頂いた以下のBlog記事で、私はこんなメッセージを書いていました。
"API規約に準じることは、開発者がただ使いやすくなるだけではなく、他のアプリケーションやフレームワークとの親和性を高め、Web APIをもっと使ってもらい、もっとスケールする上で要ともなります。"
APIを公開することは、クラウドサービスにおいても、一つの競争力であり、サービスをスケールしていく上で要ですし、公開されてるAPIも右肩上がりで増加しています。
@ITでの「APIをデジタルビジネスプラットフォームの中心にするためにやるべき5つのこと」の記事でも
「APIは、多くの企業にとって、もはや「取り組むべきかどうか」という段階にはない。」
とのメッセージが現在のAPIビジネス像を物語っているかと思います。
しかし、有意義に使われるAPI、使われないAPI、そのAPIがサービスのスケールに貢献しているのかどうか? どうすばスケールできるAPI足り得るのか? という観点では、ベストプラクティスも可視化もなかなかできていないのが現状なのかなと感じています。
そこで、今回半分会社・半分個人的プロジェクトとして、各社が公開しているAPIのエコシステム状況を可視化するプロジェクトを始めてみました。
クラウドサービスの巨人・SalesforceのAPIはどれだけ繋がるのか?
具体的なプロジェクト概要の前に、まずわかりやすい例として一つ今回のプロジェクトで採取したデータを提示してみたいと思います。
以下は各クラウドサービスがどれだけサードパーティツール(ETL/EAIやBIツール等30種類)にAPIを通じて接続可能か? というのを可視化したグラフになります。(比較情報としてExcelなども含めています。)
主要なクラウドサービスがそれぞれ並んで居ますが、Salesforceが抜きん出ていることが一目瞭然でわかるかと思います。
もちろん、これは一つの断片に過ぎませんが、APIが開発者だけでなく、エンドユーザーが利用できるツールからも接続されることによって、APIエコシステムに一役買っている、ということがここから見て取れるのではないでしょうか。
数字的な背景はもちろんですが、Salesforceに関してはコミュニティ活動やMVP制度・開発者同士のコミュニケーションも活発で、ハード面・ソフト面合わせてエコシステムの構築が進んでいることがこの数字と合わせて実感できるのではないかと思います。
(※この部分も可視化できればベストですが、客観的な数字としては、なかなか難しいですね。)
どんなプロジェクトなの?
このプロジェクトでは、各クラウドサービスが接続できる、エコシステムで構成されている要素を収集し 自社クラウドサービス、ないし他社クラウドサービス・ツールがどのような形でAPIエコシステムを構成しているのか? を可視化・公開するプロジェクトです。
「API Eco MAP」というプロジェクト名で進めています。
現在は本ブログの簡単なレポートのみですが、最終的にはWebサイトとAPIで公開し、誰でも分析・可視化をできるようにする予定です。
一例として、以下が各種ツールとクラウドサービスの繋がりを示したPower BIによるレポートです。フィルターをかけていない状態でかなり複雑に入り乱れていますが、自由にフィルターができるように埋め込んでいますので、ぜひ触ってみてください。
なお、収集しているクラウドサービスの基礎情報とAPIエコシステムの分析を行うための以下の3種類のデータです。
1.ではクラウドサービスが開発者に向けて、どのようなAPI(REST・SOAP・ODATA等)を公開しているか? SDKが存在しているかどうか? 開発者に向けたカットでAPIエコシステムの状況を可視化します。
2.ではBIツールやETL/EAIツールが、クラウドサービスAPIがどれだけ繋がるのか? エンドユーザーやツールベンダーとの連携におけるAPIエコシステムの状況を可視化します。
3.ではクラウドサービス自身が、直接他社サービスとの連携をどれだけ内包しているか? 他社サービスとの連携におけるAPIエコシステムの状況を可視化します。
集めた情報は以下のようなNNの関係性でDBに格納しています。(もう少し調整していく予定です)
どうやってデータを集めたの?
現在このような情報を提供しているサイト等は無いため、各Webサイトをめぐり公開されている情報を元に集めています。
SDK・APIであれば、例えばMirosoft Graphの場合、以下のようなWebサイトで公開されている情報を元に、
ツールであれば各ツールベンダーのサイトで公開されているような以下の情報を元にしています。
ASTERIA WARP オプション機能|EAI / ESB 国内シェアNo.1の【ASTERIA】 | インフォテリア株式会社
対象のクラウドサービスはランキングサイトやカオスマップなどから集めていますが、この辺はもう少し整理していく予定です。
もちろん、手動で集めているため、目が届かないところ確認しきれていないところはありますが、最終的にはこの情報そのものをAPIで公開し、「追加・削除・更新」を「開発者・ベンダー・エンドユーザー・ツールベンダー」問わずAPIを通じて実施していければと考えています。
どんなことがわかってきたの?
では、具体的にこのデータを収集していった結果、どんなことがAPIエコシステムとして見えてきたのか、ざっくりと考察をお伝えしたいと思います。
1.「繋がる=競争力」であるということ
卵が先か、鶏が先か、というのはあるかと思いますが、周辺環境が強力であればあるほど、自走する力がつくのは自明です。
以下は各種クラウドサービスが公開しているAPIとSDKをまとめたグラフですが、この充実度だけ見てみても、上位は軒並み有名所であるこがわかります。
もちろん、有名になればなるほど、周りがそのAPIを使って開発してくれるというのは間違いありませんが、私自身の経験としても、例えばSaleforceやMicrosoft Dynamicsは相当初期からAPI公開を行っていますので、周辺環境・開発者にリーチしながら進めているということは間違いないものと思います。
2. 国産クラウドサービスはAPI は公開されているものの、SDK・連携部分は不足
先程まで紹介したものは、やはりといってはなんですが、日本以外のクラウドサービスが中心です。Saleforceしかり、Microsoft 系クラウドサービスしかり。
では、国産クラウドサービスはどうなのか? というカットで先ほどのデータを抽出してみると、以下のようなグラフになります。(暗い紺色がAPI公開・青緑が提供されているSDKの数を示しています。)
一番最初に紹介した、BIやETL接続のツールカットで見ると、日本のクラウドサービスは対応しているところのほうが少ないので、抽出すら厳しい状況でした。以下赤枠で囲んだものが日本のクラウドサービスです。
もちろん、ユーザーの絶対数もあるかと思いますが、API公開だけで、SDKや連携先のツールは存在せず、開発者や各種ツールベンダーへのフォローアップ、エコシステム構築へリーチができていない というところは見て取れるかと思います。
そんな日本産クラウドサービスの中でも、サイボウズのKintoneはAPIの公開だけでなく、SDKの充実が素晴らしく、エコシステムの構築を行う上での力の入れようがよくわかります。
最近MicrosoftのFlowとの連携も発表されましたが、ツール連携にも徐々に力を入れてきており、うまく周辺環境とコミュニティを巻き込みながら成長しているということが上の数値と併せて実感できます。
今後の予定
もう少しデータの調整が完了次第、公式Web サイトのオープンとAPIの公開を実施する予定です。
(5月、6月ぐらいで公開できるといいな。)
現在はAPI・SDKの公開状況とツールとの連携状況のみですが、クラウドサービス対クラウドサービスの連携データも追加予定です。
現在のデータでいいから、見てみたい! 分析してみたい! という方は「sugimotok@cdata.com」まで連絡を頂ければ、お渡しします。
分析記事には #apiecomap とつけてツイート頂ければうれしいです。
お気軽にご連絡ください。
そもそもあなたは何をしている人なの?
ちなみになんですが、私が所属するCData Software Japanでは、クラウドサービスベンダー・ツールベンダー・開発者・エンドユーザーの方々へAPIの取り巻く環境を変えるお手伝いをしています。
自社のAPIをADO.NETやODBCといったデータベース接続規格を用いて、標準化させ、各プラットフォーム・Tool・サービスとの連携を安易にし、エコシステムのプラットフォームに貢献することを目指しています。
その一環として、API環境全体の可視化やAPIそのものの盛り上がりに貢献できればと思い、今回のプロジェクトをはじめました。
最後に
個人的にはじめての試みなので、なかなか進めるのが難しいですが、ご意見、ご感想、どしどし頂けると嬉しいです。